<   2011年 12月 ( 1 )   > この月の画像一覧

 

あかり

久しぶりに訪ねてみても気配はなく、真っ暗な部屋。

がっかりして、それでも近づいてみるとぼんやりと朱色のあかり。

入ってみると4つのランタンが煌々と灯され、彼は静かに迎え入れてくれました。

たくさんの本が山積みにされ
手入れされた小さな道具たちが置かれ
高い天井からはいつかわたしが作った針金細工が今でも吊るされていて

ジャラムの匂いと灯油の匂いが濃く漂う部屋は
これまでもこれからも1番好きな場所です。

お茶を淹れてもらい煙草を吸って
彼の話をきくのが大好きで

たくさんの知恵とやさしさと
結構なろくでもなさに

毎度のことながらとりつかれてしまうのです。

もう2度と来ないでください
全部悪い夢だと思って、わすれなさい

いつもそう言うのにそれでも
ほんの少し、にこりとして温かいお茶と灰皿を
差し出してくれるのです。

実家のお蔵からもってきたという沢山のランタン。
火屋は職人がふいたものだから伸び縮みして割れないのだと教えてくれました。


すこしずつ暮らしが楽になって便利になって
長い時間何かを待てなくなって
自分の頭で考えなくなって
作るのではなく買うようになって
直すのではなく買い替えるようになって

それがとても寂しいことなのだと、教えてくれたのはこの人でした。

なにもないことは貧しいことではなくて
なにもないからこそ考えて工夫して
それが身になって知恵となって
豊かになるのだと、

そんなくさい台詞は絶対にはかないけれど
身をもって教えてくれたのがこの人でした。

絵描きになりたくて有名になりたくて
お金を沢山稼ぎたくて
世界中を旅したくて

いろんな経験をして考えてきたけれど
彼のもとで学んだ時間は今でも1番鮮やかです。


帰り際に、持っていきなさいと
ひとつ
ランタンをくれました。

この灯りをみるたびに軌道修正して
根っこを掘り返して
またゆっくり姿勢を正して
いかないといけないなと思うのでした。

b0225743_2331490.jpg

[PR]

by seri0613 | 2011-12-20 23:32 | 日記